9/9(土)に公開したクリストファー・ノーラン監督の最新作映画「ダンケルク(原題:dunkirk)」を観てきました。

以下、映画内容についてのネタバレが含まれますので注意ください。
あらすじ
第2次世界大戦初期、ナチスドイツのフランス侵攻によりイギリス、フランス等から成る連合軍はフランス最北端ダンケルクに追い詰められます。この時、イギリス首相ウィンストン・チャーチルは連合軍約40万の撤退を決断しました。この映画は、軍艦の他に民間船やヨット、はしけを含むありとあらゆる船舶を動員した史上最大の撤退作戦(ダイナモ作戦)を舞台とし、陸、海、空の3つの視点から構成された内容となっています。

感想
この映画の売りは何といっても監督のクリストファー・ノーランですね。日本ではレオナルド・ディカプリオや渡辺謙が出演したインセプション(原題:Inception)が有名ですが、ダークナイトライジング(原題:The Dark Knight Rises)を始めとしたバットマンシリーズやインターステラー(原題:Interstellar)と、出す作品全てが内容、興行共に外れ無しという化け物監督です。私もこの監督の映画は大好きで、全作品観ています。
さて、本題の感想なんですが、なんというか非常にオーソドックスな映画を作ったなーという印象です。ストーリはシンプルで台詞も少なく、過去作品のような凝った設定やストーリー展開を期待すると若干の肩透かしを食らいます。映画の舞台となったダイナモ作戦自体が奇跡のような話なのであえて余計な脚色をしなかったのかもしれません。
視点を変えて、当時のダンケルクという戦場の臨場感を味わう映画と解釈すると満点近いです。陸の視点はトミーという若い英国兵の脱出劇なのですが、乗った軍艦が次々と沈められるという絶対絶命が続き息をつかせる暇もありません。台詞が少ないと書きましたが、こんな状況で若い兵士が立派な台詞なんて吐けるわけないですよね。ちなみにこの兵士役のフィオン・ホワイトヘッドという役者さんですが、監督がオーディションで抜擢した新人さんで、ベテラン俳優にありがちな演技慣れしている雰囲気が無く、一層緊迫感が出ていました。狙い通りの演出なんだと思います。
海の視点はボランディアでダンケルクに救出に向かった民間船の船長のお話です。この船長は息子が空軍で戦死しているのですが、自分の世代が引き起こした戦争に子供世代を戦場に送ってしまったことに負い目を感じており、危険を顧みずダンケルクに向かいます。この船長、とても渋い役どころで、発する言葉に重みがあり、その一つ一つが心に突き刺さります。終盤、ナチスドイツ軍が迫る中、あらかた軍艦を沈められてしまった状況で、ダンケルクの桟橋で途方に暮れている将兵の前に民間船の一団が現れるシーンがあるのですが、演出の妙もあり胸が熱くなります。
空の視点は、英国戦闘機スピットファイアによるナチスドイツ軍との空中戦です。監督はCGを使わないことで有名で、これらのシーンは実際の戦闘機を借りて撮影したようです。戦闘機好きには堪らない内容になっているのではないでしょうか。
評価
10点満点中8点です。とても良い映画だとは思いましたが、前作インターステラーの時に圧倒されたような感じには至りませんでした。万人にオススメですという映画ではありません。ただ、最近のCGまみれの映画にはない、フィルムで撮影された生きた描写が随所に見られ、これぞ映画だという作品だと思います。
全く色気のない映画なので興行的には大丈夫なんだろうかと心配に思ったのですが、9/13時点wikipediaの情報では全世界で500億円を売り上げています。予算は100億円程度なので余裕で黒字ですね。この辺はさすがです。
この撤退戦は、文字通り撤退なので勝利ではありません。この時、イギリス軍は戦車や銃器等大半の物資を捨てることになりましたが、替えの利かない人的資源を温存できたことで、後の反撃から勝利に繋がりました。第2次世界大戦の歴史的分岐点であり、英国人の誇りにもなっているこの撤退戦、勝利国の方々の視点で見ると何か違う印象があるのかもしれません。


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